前回までのあらすじ
築9年目、輪番制で回ってきたマンション理事の役職。くじ引きで『副理事長』に就任し、引継ぎゼロのまま始まった初めての理事会で飛び出したのは、まさかの『管理費赤字』と『値上げ検討』の言葉。
予習なしで、39ページの議題に翻弄されながらも、「このままではヤバい」と本能が警鐘を鳴らす…。混乱と不信、そして、薄っすらと芽生えた“闘志”――。
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管理会社と理事会の関係を理解する|マンション管理の基本構造
管理会社や理事会についてご存知ない方は、こちらの記事をご覧いただくことで、今回の内容が分かりやすくなります。
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規約と睡魔と通勤電車
管理会社からの衝撃の提案とは
初めての理事会で、管理会社から突き付けられたのが、下の2点です。
- 管理費会計の赤字脱却について検討してください
- 管理会社としては打つ手なしのため、毎月徴収する管理費の値上げを提案します

「赤字脱却できへんねやったら、値上げしかないで」って事やろ?
管理費とは?副理事長が抱いた素朴な疑問
管理費会計の赤字脱却の検討以前に、分からないことだらけです。
- 管理費?
- 何に幾ら支払っている?
- 収入は、いくらある?



そもそも、『マンション管理』って何?
当時は、インフレ時代ではありませんでした。
物価の変動はないのに、なぜ赤字なのかも不思議です。
仕方がないので、マンション購入時にもらった管理規約の載った冊子を、ひっぱり出してきます。
管理規約は眠気との格闘
パラっとめくったら、クラっと眩暈(めまい)がします。



…字ばっかりやん。おもんないこと間違いなしのコレ読むん?
当時はフルタイム勤務、勤務地は遠く、ひとり暮らしのため、家事にも時間が取られます。
ただでさえ自由時間がないのに、笑いが1つもない管理規約を自宅で読むなんて、私が可哀想すぎます。



通勤や。通勤電車の中で読むしかない!
通勤電車で読む管理規約は苦行
朝の、そこそこ混んでる車両でも、扉から離れた少し空いてる中の方に移動して、A4サイズの冊子を広げます。
立っているのに、眠気がきます。
ぐっすり眠ってスッキリした日でも、驚異的な眠気が襲ってきます。



百発百中で眠くなる。即効性もすごい。
片道30分程度は読める時間があるのに、4~5ページ進めば御の字です。
帰りも頑張って冊子を広げますが、一日働いて疲れているため、1ページも進まないこともあります。



眠れない夜には、管理規約をどうぞ。
何とか読み終わって、愕然とします。



あかん。規約だけじゃ足りん。管理会社との『管理委託契約書』も読まな、はなしならん。



もう泣いたろかな。
あやしい管理人
過去資料を求めて管理人室へ向かった理由
規約、管理委託契約書に苦しめられながらも、赤字脱却のためには手を緩めるわけにはいきません。
なぜ赤字になったのか、過去の議事録と総会資料も並行して確認しなければなりませんから、原本を確認しようと管理人室へ向かいました。



過去の議事録も総会資料も、1年前までは全部揃ったコピーもっててんけどな。惜しかったな。1年前のGWの緊急事態宣言のとき、暇つぶしに受けた整理収納アドバイザーの実技訓練で、捨ててもうてんな。



捨てて失敗はアレだけやな。でも、管理人室で保管しててリカバーできたから、大失敗ではないかな。ちなみに、捨てて良かったことのほうが多いのは、間違いない。
コンコンコンっと管理人室の扉をノックします。
……………。



あれ?でてけーへんな。電気点いてるのに。
もう一度、ノックしてみます。
……………ガチャ。
口元を隠しながら、管理人が出てきます。



じじい。朝めし食ってたな?
勤務時間中に起きた朝食事件
もぐもぐを、隠しているつもりの管理人に依頼します。
「副理事長やってる〇〇〇号室の〇〇です。過去の議事録と総会資料一式を借りに来ました。」
「…(もぐもぐ)…全部ですか?どこやったかな?すぐには無理です。」



まだ食ってんかい!
資料の所在と管理人の対応に感じた違和感
「忙しかったら、私が探しますけど?」
「いやー。色んな書類ありますから、私が出しますから。」
「じゃあ明日、また取りに来ます。」
「あっ明日?!いや明日はちょっと。どっどうしても要りますか?あ、要りますか。じゃあ、一週間後に取りに来てください。」



じじい、勤務時間中に飯くっておきながら、生意気やな。「どうしても要りますか」って何やねん。のらりくらりと、出さん気やったやろ!過去の資料全部ってゆっても、8年分しかないねんから、フラットファイル1冊で収まる程度やぞ。なんで、そんな時間かかんねん。



それに、勤務時間中やのに朝めし食うって、年季の入ったサボり常習犯やろうな。どんな働き方してるか、調査せなアカンな。
管理人の勤務実態に湧く疑問
当マンションは超小規模で、内廊下ですから、そんなに汚れることはありません。
そして、コストの大部分を占めるのは人件費と、相場は決まっています。
もぐもぐ事件が無くても、管理人の勤務時間を減らせば、赤字脱却の可能性は高いと睨んでいました。
管理人に警戒されてはいけませんから、しばらく泳がせることにします。



刑事でもないのに、泳がせる日がくるとはな。
赤字解消と黒字の道筋
管理人の仕事ぶりを視察
管理人から借りた過去資料のコピーを取った後、ついに、管理人の働き方の調査に乗り出します。
「おはようございます。先日は、忙しいのに資料を出していただいて、有難うございました。副理事長になったんですけど、何も分からないんで、教えていただきたいんです。すみませんが、今日1日、見学させてください。」
「はい。…もう仕事、始めていいんですか?」
「はい。始めてください。私は居ないものとして、普段通り進めてください。」
管理人は、いつも通り仕事を始めたかと思えば、20分後には、早くも自分の勤務先である管理会社の愚痴を始めました。
愚痴ばかりの勤務状況
気を使って世間話をしているのかもしれませんが、適正な勤務時間を調査しているので、それでは困ります。
「私のことは気にせずに、どうぞ仕事してください。」
と言っても、とくに何をするでもなしに、ダラダラとマンション内を歩き回り、隙あらば愚痴を言ってきます。
「あー、そうですよねー。大変ですねー。あ、あの私のことは気にせずに…。」



このくだり、何べんやんねん!もうええわ!
『これは、かなりの時間を削減できるな』と思っていたところ、管理人が驚きの発言をします。
「今から1時間休憩です。」
勤務契約にない休憩時間
「え?1時間?あ、じゃあ、また1時間後に来たら良いですか?」
「そうですね。」



何が、「そうですね。」じゃー!あほかー!じじい、勘違いすんなよ。雇い主は管理会社かもしれんけど、真の雇い主はマンションの住民じゃ!!
1時間の休憩を経てからも、仕事というような仕事はせず、ずっと愚痴を言ってます。
これ以上の収穫は望めそうにないので、大事な確認をしておきます。
「今日みたいな働き方は、私がいるからですか?あ、ちがうんですか。ずっとこうですか?」
「ずっと前からこうやで。」



『サボってる』って意識がないんやろうな。なんでも正直に言う人やわ。いつの間にかタメ口やし。もう、今の働き方で来てもらう気はないで。ごめんな。
こうして管理人は、管理会社の愚痴をご機嫌で言いまくり、「病院に予約を入れてるから」と、急に大慌てで帰っていきました。
理事会への共有方法が今後の課題
赤字脱却のため、管理人の勤務日数を減らす方向に間違いはないと確信しましたが、つぎは、今後の進め方について頭を悩ませるのでした。



こんときは、役員メンバーに何も言わず、勝手に一人で動いてる段階やったからな。どうやって他のメンバーに連絡とって、協力してもらうかやな。



ある程度の『勝算が見込めて、今後、こうしていきたいって道筋』を見せんと、嫌がるやろうからな。迂闊に動いて、失敗せんようにせんとな。はー、大変。
本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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